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桃翔さま


ニブルヘイム――
クラウドとティファの故郷。
5年前にすべて焼かれてしまったって聞いていた。
でも、どうして?今目の前にある町は、何事もなかったように存在している。
クラウドもティファも、絶句して立ち尽くしていた。
2人の様子でわかる。彼らの記憶に間違いはない。
この町はどこかおかしい。


入ってみて確信する。あちこちに黒いマントを着た人がうろついている。
村人もみな不自然。
でもクラウドもティファも、周りにはあまり目がいっていない。
2人が目指すのは、それぞれの生家。
ありえないとわかっていても、2人は願わずにいられないのだろう。
大切な人たちの生存を・・・。
「クラウドについててやってくれ。俺はティファのそばにいる。」
バレットが言った。
「うん。」
「アタシたちはちょっと村の様子を調べてくるよ。いくよ、ケット!レッド!」
ユフィ達が走り出した。
わたしも慌ててクラウドの元へ走った。


クラウドは家の前で躊躇していた。
やがて中に入り、全てを悟った。
彼の探し求めた人とは似ても似つかない村人が生活していた。
黒いマントを着た男までいる。
やはりこの町は復元されたのだ。おそらく神羅がからんでいるのだろう。
家を出るとクラウドが自嘲気味に笑った。
「・・・あの時、母さんは死んだ。全て無くした。あの炎の熱さ、俺は覚えている・・・。」
いてもたってもいられなくなり、彼を後ろから抱き締めた。
かける言葉が見つからない。
彼は黙って、腰にまわされた私の手の上に、自分の手を重ねた。


わたし達は一度宿屋に集まり、ユフィ達からの情報で神羅屋敷と呼ばれていた建物へ向かった。
書類と実験装置の山。
入った途端クラウドが気持ち悪そうに口を押さえた。
「クラウド?」
すごい汗をかいている。こんなクラウドは初めて見た。
「・・・大丈夫だ」
「ちょっと、大丈夫には見えないわよ?」
ティファも思わず眉間にしわをよせる。
「本当に大丈夫だ。皆で手分けして、調べよう。」
クラウドが机の上を調べ始めたので、仕方なく皆も四方に散った。
クラウドの様子が気になって、そばに近寄った。
「すごい汗、だよ?ほんとに平気?」
彼は少し微笑んだ。
「ああ。エアリスも何か手がかりが無いか、探してくれないか?」
「・・・うん、わかった。クラウド、無理しないでね。」


部屋に満ちる邪悪な気配にはっと顔を上げた。
「セフィロス!」
奥の部屋でクラウドの声がした。
セフィロス!?そんな・・・!
駆けつけると長い銀髪をなびかせ、セフィロスが不適な笑みを浮かべていた。
2人の話し声がする。
「ところでお前はリユニオンに参加しないのか?」
「なんのことだ?!」
一瞬クラウドが分裂してしまうような錯覚を起こした。
今のは、一体・・・?
「ジェノバはリユニオンして、空からの厄災となる」
「何の話を・・・」
みんなには見えてないの!?
セフィロスの言葉で彼の精神があんなにも揺さぶられているのに・・・!
「もしお前が自覚するならば、わたしを追ってくるがよい」
「まて!」
セフィロスはふっと笑い、次の瞬間消えていた。


その夜、宿屋で会議を行った。新しく加わったヴィンセントの為に、現在の状況を説明したり、
屋敷で調べたことを報告したり、今後のことについて話し合った。
でもわたしは、彼を刺激するのが怖かった。
クラウドは一見何でもなさそうにしているけれど、よく見るとひどい汗をかいている。
さっきセフィロスの前で彼に起こった異変は、誰も気づいていないようだった。
もしかすると・・・彼自身も気づいていない?
なんだか、見ていられない。
「クラウド、もうそろそろ、会議いったんやめよ?」
わたしが言うと、ティファ達もうなずいた。
「・・・ああ、そうだな。明日はロケット村へ向かおう。解散。」


ユフィとナナキは散歩に行った。最近とても仲が良い。精神年齢、近いからかな?
ケットの姿は見当たらない。ネコ・・・だからかな?すぐどこかへ行ってしまう。
ティファはバレットとヴィンセントを誘って飲みに行くことになったらしい。
ヴィンセントが早く皆になじめるように、気を使ったようだった。
当の本人は面倒くさそうだったけど、お酒は好きみたいで、黙ってついていった。
「クラウドを頼むわねっ。」
からかうようにウィンクしながらティファが言った。
クラウドの具合いが悪いことに、ティファも気づいていたみたい。
ティファはいつも周りに気を配っていて、さりげなく優しい。
彼女みたいになりたいと、いつも思う。


わたしはクラウドにそっと近づいた。
「具合悪そう。だいじょぶ?」
彼は平静を装っているけど、まだ気分が悪そうだった。
「風邪、かな?」
彼の具合を悪くさせている原因が、ただの風邪だったらどんなにいいだろう。
「どうかな」
クラウドが立ち上がった瞬間、彼の体がぐらっと揺れたので、思わず走りよって抱きかかえた。
でもわたしでは逞しい彼の体を支えるには力が足りず、一緒にフラフラしてしまった。
彼は笑いを含んだ目で、ちらっとわたしを見た。
「頼りないな」
わたしは頬をぷーっと膨らませて言った。
「そんなことないもん!クラウドくらい、かかえて部屋に連れて行けるもん!」
彼の左手首を左手で掴んで肩にかつぎ、右手で彼の腰を抱えて階段を上り始めた。
彼はおかしそうに、声を殺して笑っている。
わたしはますますムッとした。
わたしだって役にたてるんだから!

彼の部屋に入り、手前のベッドにクラウドを座らせようとした。
その瞬間、彼が私をぐっと引っ張り、わたしはクラウドに覆いかぶさるようにベッドに倒れこんだ。
「きゃっ!」
彼はニヤッと笑った。
「部屋に来る口実?」
わたしはびっくりして飛び起きた。
「ち、ちがう!!そんなんじゃないもん!役に立ちたかっただけ・・・」
顔が真っ赤になるのがわかって、両頬を手で隠した。
彼はぷっと吹き出して笑い出した。
「冗談だよ」
クラウドは楽しそうに顔を隠して笑っている。
からかわれた!心配したのに〜!
「もう!いじわるっ!」
クラウドを叩こうとすると、彼が私の手を掴んだ。
彼が神秘的な蒼い瞳で、じっとわたしを見た。
「俺は・・・2人になりたかった」
ささやくように彼が言い、わたしを引き寄せた。
そしてそっと唇を重ねた。

唇を離すと彼が目を伏せ、つぶやいた。
「・・・ずっと前から、たまに声が聞こえるんだ。」
「声?」
「頭に直接聞こえてくる。少年の声の時もあるし、どこかで聞いたことがあるような声の時も・・・。
内容も様々で・・・だいたいは意味がよくわからない。」
わたしはびっくりした。
彼はわたしの胸に顔を埋めた。いつもより少し幼く見える。
「それって星の声とは違う、よね?」
「たぶん・・・違うと思う」
彼はわたしを抱きしめる力を強くした。
「今まではその声が聞こえると不安になった。俺の中に、俺の知らないもう一人の俺がいるようで・・・」
セフィロスと会話していた時のクラウドを思い出す。
やはり、彼に何かが起こっている。
彼を救いたい。わたしに何ができる?
「でも今は違う。エアリスがいてくれると思うと、安心できる。エアリスなら、どんな時でも俺を信じてくれると思うから・・・」
彼の言葉が胸を打つ。わたしを必要としてくれてるのがうれしい。

でも・・・ごめんね、クラウド。
わたしはいかなくちゃ。セトラの使命を果たさなくちゃ。
本当は、あなたのそばにいて、ずっとあなただけを護りたいけど・・・。
星を護ることは、あなたを、みんなを護ることになるから。
「わたし、絶対クラウドのこと、護ってあげるね。」
星ごと護ってあげる。
例えライフストリームに還ったとしても。
彼はちょっとおかしそうに笑った。
「ボディガードは俺の方だろう?」
「あっ!そうだった。うーん・・・じゃ、わたしにも依頼して?報酬は、安くないけど。」
クラウドとわたしは顔を見合わせて笑った。
「じゃ・・・デート1回」