promise
桃翔さま


ウータイ―――
ユフィの故郷だ。
一時はマテリアを盗まれたり、騙されたり、ユフィにはさんざんな目に合わされたが、
聞けば色々と事情もあるようだし、ユフィもこれまで通り仲間として一緒に旅を続けたいらしい。
ユフィに甘いティファとエアリスに説得されて、仕方なく水に流すことにした。
明日は出発する。

もうすぐ夕暮れという時に、宿屋で武器の手入れをしていた俺のそばに、エアリスがやってきた。
「今、忙しい?」
武器の手入れを続けながら言った。
「どうした?」
「すごく素敵な場所見つけたのっ。一緒に、行かない?」
「・・・素敵なとこって?」
「な・い・しょ。でも、クラウドに見せたいの。ね、行こ?」
覗き込むように見つめる。どうも俺は、この仕草に弱い。
正直に言えば、エアリスがこういうことを言い出す時、俺も楽しみで仕方ない。
きっとエアリスの可愛いらしい仕草が、笑顔が見られるから。
でもそんなこと恥ずかしくて、絶対に知られたくない。
俺は興味なさそうに返事をした。
「仕方ないな・・・」
エアリスはぱあっと笑った。そう、この笑顔だ。
「わーいっ。行こ!」
俺の右腕を引っ張る。
思わず微笑みそうになるのを、必死でこらえた。

街のはずれまできた。少し高い崖になっている。
「見て!この下!」
見下ろすと一面ピンクや白や赤の世界。
花をつけた木々が、何百、何千と続いている。
想像していたよりもはるかに美麗で雄大な風景に、さすがの俺でも驚嘆した。
「・・・すごいな・・・」
思わず呟いた。
エアリスは満面の笑みで、嬉しそうにこちらを見ている。
「でしょ〜!こーんなに、たくさん!初めて見た!」
エアリスは両手を広げて、興奮しながら話している。
「見つけた時は、涙、出ちゃった。」
その時の感動を思い出したのか、エアリスはまた涙ぐんだ。

エアリスがいなかったら、あのまま宿屋にいて、明日何も知らずにこの町を後にしただろう。
花がたくさん咲いていると先に聞いたとしても、別に見たいとは思わなかったに違いない。
そして、エアリスと出会う前の俺ならば、たとえ目にしても、何も感じなかった。
でも、こうして目の前にすると、見に来て本当に良かったと思う。
・・・俺は変わった。エアリスと出会ってから。
「来年も、ここに見に来れたらいいのに・・・。」
エアリスが呟いて、はっと口に手をあてた。ふと寂しそうな表情を見せる。
俺は一瞬胸がザワザワした。

「・・・また、来よう。」
俺がそう言うと、エアリスは少しだけ悲しそうに笑った。
「うん。そうだね・・・。あ、そうだ、約束して?」
エアリスは右の小指を立ててみせた。
指きりなんて子供のすることだと思うのに、エアリスが相手だと、とても大切な行為に思える。
でも気恥ずかしさから、どうでもよさそうに肩をすくんでみせ、手を差し出した。
「ほら」
指を差し出すと、彼女は白く細い指を俺の指にからめ、歌を歌いだした。
透き通るように美しく優しい声。いつまでも聞いていたくなる。

「ゆびきった!」
エアリスがぱっと手を離した瞬間に、思わず手首を掴まえた。
掴んでから自分でびっくりする。
「クラウド?」
首をかしげて、エアリスが仰ぎ見る。
離れていく手を見て不安になって、つい掴んだ、なんて言えるわけがない。
収集がつかなくて、ちょっと考え込んだ。そして、その小指に軽くキスをした。
「・・・!」
エアリスの顔が紅潮していくのがわかる。そして多分俺の顔も・・・。
・・・何やってんだ、俺は・・・。
自分に似合わないその行為に、恥ずかしくなって、ぶっきらぼうに言った。
「そろそろ帰るぞ」
宿屋に向かって歩き始めると、エアリスが腕にとびついてきた。
「本当に叶いそうっ!嬉しいっ。」
腕を組み、可愛らしい顔で見上げるエアリスを見たら、ついつられて笑ってしまった。
本当に俺はどうかしている。
でもこんな自分も、たまにはいい。
俺たちは遠回りしながら宿屋に帰った。