| 澄んだ翠色の瞳は全ての不安を拭い取る。 屈託のない笑顔は見るものに安らぎを与える。 いつも心地よい風を運んでくれるエアリスへ。 君が生まれたこの良き日を、俺は心から祝福したい――― 翠玉のフェアリー 「誕生日おめでとう、エアリス!!」 パン、とクラッカーを鳴らしたのはザックス。 「ありがとう、ザックス、クラウド…!」 宴が始まると本日の主役は大きな翠玉の瞳を輝かせ眩いばかりの笑顔を向けた。 ――そう、この笑顔。 これこそが俺とザックスが一番守りたいもの。 「最高の笑顔には最高の花を――」 ザックスは歯の浮くような気障な科白とともに可憐なピンクのバラの花束を絶妙なタイミングで取り出す。およそこの無骨な男には似合わない花束もエアリスが手にすることで途端に華やかなものへと変わった。 「恥をかかずに済んでよかったなぁ、ザックス」 ぼそり、とザックスの耳元で囁いたクラウドは勝気な眼差しを向けた。 「それを言うなよ……」 常に強気なザックスも今日はバツが悪そうに答えながら完全にクラウドの尻に敷かれている模様。 ちなみに主賓のエアリスにはこのやり取りは見えていない。 「おまえに貸しを作っておくのも悪くはない♪」 してやったり、で上機嫌なクラウドはエアリスに向き直り料理を取り分けたりグラスにシャンパンを注いだりとサービスに勤しむ。 ――そう、事の発端はパーティーが始まる約30分前の出来事。 「ああっ、もう時間がないっ!! ザックス、これはそっちに。あ、あとテーブルのグラスも磨いておいてくれ」 今日に限ってなぜクラウドはこうもてきぱきと動くのか、そしてなぜ自分がこんなにこき使われるのかザックスにはまるで理解できないでいた。 「あのさ、クラウド。 エアリスを呼んでパーティーを開くのは分かってるが、今日はなんか特別な日なのか?」 あっけらかんとした口調で言うザックスに対し、思わず手に持っていた白磁のプレートをすべり落としそうになったクラウド。 「時間のないときにバカな冗談なんか言ってるんじゃねーよ。危ねー、落とすかと思った」 天然で気づいていないとは知らずに、ザックスにからかわれていると思ったクラウド。本気で相手をするでもなくいそいそと支度を続けている。 「分かんねぇって言ってんだよ。教えてくれたっていいだろ!?」 …………。 「おまえは最っ低なバカ男だ。こんなヤツに手伝わせようとした俺が間違っていた……」 一気に脱力しかけたクラウドにザックスはなおも訝しげな顔をして理由を求めてくる。 「だ か ら 、何なんだよ!?」 まだ言うか、とばかりに蒼い瞳でザックスを睨む。 「そんなに知りたきゃ教えてやる!!! いいか、よ――く聞けよ。今日はなぁおまえの大好きなエアリスの誕・生・日だ」 その直後、クラウドの言い放った氷点下の冷気を思わせる厭味に凍りつくザックス。 続けざまにクラウドは容赦なく止めを刺す。 「がっかりするだろうな、エアリス」 くるり、とクラウドが背を向けた瞬間、ガラスの砕けるような音を自分の中に聞いたザックスはクラウドの肩を掴んで半ば強引に振り向かせる。 「最初っから言えよ、おまえはっ!!」 自分だけ知らなかったことが堪らなく口惜しくなり子供のようにムキになるザックス。 「そんなこと知るか!?分かっているとばかり思っていたんだから!!」 二人は火花が散りそうなほど睨みあったかと思うと先にクラウドがすっと目を逸らす。 「……花束の一つでも買って来い。バカ」 ザックスを追い出したクラウドは軽く頭痛を覚え溜息を付いた。 「はぁ…なんであそこまで気が利かないんだか、ヤツは――」 約束の時間の五分前にエアリスがやって来ると待ちかねたようにクラウドがエントランスで出迎えた。 部屋へ通すとエアリスは左右をきょろきょろと見回す。 「ねぇ……ザックスもいるって聞いてたけど…?」 ―――今頃切羽詰って花束でも買い込んでるんだろうけど。 思わず零してしまいそうになったクラウド。 その様子を想像して吹き出してしまったが、エアリスは何のことだか分からずに不思議そうにクラウドを見る。 「ああ、ゴメン。あいつならすぐに戻ってくるよ。さ、座って」 と、エアリスを席に着くよう促したその時。 「―――間に合ったか………あ(汗;)」 バタンと荒々しい音を立てて部屋に駆け込んできたザックスはすでに来ていたエアリスを見てがっくりとうなだれた。 「悪い…待たせた……」 そんなザックスにもエアリスは聖女の微笑をもって返す。 「今着いたばかりだから気にしないで。 ふふ…でもやっぱりザックスはいつまでたっても駆け込み乗車が直らないのね」 またしても止めを刺されたような気分になったザックスは、気を取り直してクラウドに目配せした。 “絶対言うなよ!” …とまぁ、こんなエピソードが付いていたとかいなかったとか。 ともあれ、エアリスの笑顔を普段の何倍も拝むことのできた二人はどんな事情があるにせよこの数時間が至福の時であることに違いなかった。 「二人にお祝いしてもらえてとても楽しかったわv 今日は本当にありがとう…!明日からもよろしくおねがいしますっ!」 明日から“ずっと”だよな?エアリス。 ――Happy Birthday Aerith ! |
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